がん緩和ケアから非がん疾患緩和ケアへ

人生の最終段階における医療・ケア 

 

2012年(平成24年)に八幡浜在宅医療研究会が発足し、これまで14回の講演会を開催してきました。また、第50回までは「在宅がん緩和ケア症例検討会」、第51回からは名称を改め「在宅緩和ケア症例検討会」とし、毎月第1金曜日(午後7時〜8時30分)八幡浜医師会館に多くの専門職が集まり開催し、2018年(平成30年)9月現在で第53回を数えています。がん緩和ケアはもちろんですが、非がん疾患緩和ケアにも焦点を当てて症例提示し、多職種で検討し学習を積み重ね、現場でのより良い実践に結び付くことをめざしています。

 

 今年(2018年、平成30年)は厚生労働省から「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(旧ガイドライン:「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」)が改訂されました。「最後まで本人の生き方(=人生)を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であることから、『終末期医療』から『人生の最終段階における医療』へ名称変更」など多くの改定が盛り込まれました。

 

 非がん疾患に目を向けると、高齢社会の進展や疾病構造の変化に伴う心不全は非がん疾患の代表格で、患者さんの爆発的な増加(心不全パンデミック)を背景に、近年心不全に対する緩和ケアの整備が喫緊の課題として取り扱われるようになりました。循環器専門医、プライマリ・ケア医(総合診療医、在宅医)、緩和ケア医の3領域の強力なチームの構築が望まれます。

 また、COPDに代表される呼吸不全も同様なことが言えるでしょう。脳血管障害で重度の嚥下障害をともなう寝たきりの患者さんも緩和ケアマインドで対応する必要があります。神経難病もしかりです。

 

 この原稿を書いている2018年(平成30年)9月26日現在、この9月に入って、しかも9月15日以後5人の患者さんを在宅で看取らせていただきました。2日に1人の看取りラッシュでした。多職種連携で関わり十分なACP(アドバンス・ケア・プランニング)を場面場面で実践した患者さんばかりです。特に訪問看護ステーションのスタッフの活躍には頭が下がります。1名は入退院を繰り返してきた末期心不全、1名は入院を断固として拒否した方でCOPDを背景にした肺炎からの重症呼吸不全、1名はペースメーカー植込みの既往のある末期肝臓がん、1名は多発性脳梗塞後遺症のため重度嚥下障害から誤嚥性肺炎で入退院を繰り返していた寝たきりの患者さん(終末期には奥様の希望で胃瘻造設などの経管栄養はせず、持続皮下点滴;500ml/日を約3か月継続)、1名は胃がんが発見されたときは多発性肝転移・肝不全状態で当院へ在宅緩和ケアを依頼された患者さんです。

 

 これまで、今年当院開院8年目(2018年(平成30年)9月26日現在)で164例在宅で看取っていますが、そのうちがん症例が60∼70%を占めています。最近ではこの9月の事例を見ても明らかなように、がん以外の疾患で看取りをする症例が増加している印象があります。このような意味でも、非がん疾患に焦点をあてた検討会も時代を反映させたものです。

 

 もう1点、緩和ケアを提供する医療者・メディカルスタッフがぜひとも知っておく必要があるのは、「臨床倫理の4分割表」です。これは患者さんの倫理課題を検討するためのツールとして以下に示す4つの枠に問題点を分け入れて構造的に問題点や方針を考えようとするものです。

 

医学的適応(Medical Indication)

患者の意向(Patient Preference)

QOL(Quality of Life)

周囲の状況(Contextual Features)

 

「臨床倫理の4分割表」についての詳細は専門書に譲りますが、私自身最初に学んだ書籍「新興医学出版社;第5版:臨床倫理学」がお勧めです。

   臨床倫理4分割表を使うことによって、担当した医療者が一人で考えこまず、しかも多職種で考えをシェアしながら、関係者が納得できるような方針をたてられる可能性が高まります。

 

 先ほども述べたACP実践の際、様々な段階で患者さん、患者さん家族が治療方針に対して意思決定、代理意思決定をする際、意思決定支援も医療者の重要な任務です。これから人生の最終段階に向けた話し合いを患者さん自身が行うようなことが増え、終末期の意思決定に変化が生まれてくる可能性もあると思います。医療者がどのように意思決定者・代理意思決定者の決断を支えていくのか、まだまだ考え続けなければならない課題です。

 

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熱中症の症状と対策

熱中症の症状と対策

近年、夏の暑さは厳しさを増し、35度を超すことも多く、地域によっては40度を超す記録的な暑さが連日報道されるようになりました。

西日本豪雨の災害地でも容赦なく強い日差しが襲いかかっています。

それにともなって、増加しているのが「熱中症」です。当院にも熱中症で受診される方が増加しています。そこで、熱中症についてまとめてみました。

 

<熱中症:4つの分類>

「熱中症」とは、“高温・多湿の環境に身体が適応しないことによって起こる様々な症状の総称”で、進行状況や内臓、身体機能への影響によって、細かく4つに分類されます。 

 

■熱失神

暑さによって末梢血管が拡張し、血圧が低下する
血液の循環量が不足し、めまいや失神が起こる

■熱けいれん

大量の発汗によって、ナトリウム量が低下する
筋肉が硬直して、筋肉の痛みやけいれんが起こる

■熱疲労

大量の発汗によって、脱水状態が進行する
体液の不足により、体温が上昇し、頭痛や吐き気、虚脱感が起こる

■熱射病

熱中症の分類の中で最も重症
症状が進行し、体温調節機能が失われる

40度以上の高熱がみられ、発汗が止まり、意識障害が起こる

 

最近では、上記のような分類では、実際には見分けは難しく、基準もあいまいであることから、重症度に応じて診断基準を分かりやすくした、機銑慧拱類が適用されることも多くなってきました。

 

掬戮老攵匹箸気譟熱失神・熱けいれんに当てはまります。
凝戮惑疲労に分類されます。
慧戮禄転匹如熱射病に当てはまります。
|羶神経症状
肝臓・腎臓機能障害
7豈婉展念枉錣里Δ腺韻弔任眈評に見られる場合、慧戮反巴任気譟
掬戮砲皚慧戮砲眦てはまらないものが凝戮反巴任気譴泙后

 

<重症度によって異なる症状>

適切な対処がなされないと、発症から時間が経つにつれて、進行し重症化していきます。軽度のうちに症状に気が付き、適切な対処をし、症状の進行を食い止めることが大切です。そのためにも、症状をよく知っておくようにしましょう。

 

■掬戞熱失神・熱けいれんの症状
主な症状:大量の発汗・めまい・立ちくらみ(失神)・筋肉痛・こむら返り

 

顔色が悪くなり、フラフラしたり、ボーっとしたりしている状態がみられたら、
休憩と適切な塩分と水分の補給が必要です。掬戮両豺腓砲蓮体温に変化は見られません。筋肉のけいれんや足がつるなどの状態になることもあります。意識を失っても一時的で、適切な対処で改善がみられる場合には、症状の悪化が無いかよく観察し、状態を見守ります。

 

■凝戞熱疲労の症状
主な症状:頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感

 

判断力や注意力が著しく低下し、ぐったりとしている場合には要注意です。
すぐに十分な塩分と水分の補給に加えて、環境の改善を行います。医療機関へ搬送し、入院が必要になることがあります。体温は40度以下ですが、対処が遅れると慧戮飽楾圓靴討靴泙Δ燭瓠管理が大切です。口から水分を摂れない場合には、点滴が必要になります。

 

■慧戞熱射病の症状
主な症状:意識障害・40度以上に体温が上昇・発汗停止・皮膚の乾燥・昏睡

 

意識障害や、大量に出ていた汗が止まり、皮膚の渇きがある場合には、一刻も早い冷却と病院への搬送が必要です。高熱によって、肝臓や腎臓など臓器が影響を受ける危険が高く、後遺症が残る場合や、死に至ることがあります。特に脳は熱による影響を受けやすいため、発症後の冷却がその後を左右します。

のどが渇いたと感じた時は、すでに脱水状態であると覚えておいてください。
一度症状が出ると、進行が早いです。少しの異変でも、すぐに環境を改善するように心がける必要があります。顔色や表情など、普段と違った兆候がないかよく観察するようにしましょう。

 

<予防のポイント>

熱中症は、応急処置の速さも大切ですが、やはり予防が最も重要です。

予防のポイントは5つです。

 

5月頃からしっかり準備して熱中症を予防しましょう。

 

1 気温・湿度のチェック
熱中症は高温・多湿の環境に気をつけることが大切ですから、気温と湿度のチェックを怠らず、室内では、エアコンや扇風機で環境を整えることが必要です。
高温環境を示す数値は「暑さ指数」を参考にするようにします。気温・湿度・輻射熱から算出する指数で、夏になると毎日予報がでますので、気にかけて服装などを決めると良いでしょう。

 

2 こまめな水分補給
暑い時は、目に見えなくても多量の発汗により、水分を失っています。喉の渇きを感じる前に、こまめに水分を補給することが必要です。特に運動や労働時は、注意が必要です。体を動かしている時は、15分〜20分おきには休憩をとり、水分補給しましょう。

 

3 暑い中での無理な運動を避ける
運動時は熱中症のリスクが高まります。最も暑い時間の活動を避け、運動時間を短縮するなど、リスク管理が必要です。普段より多く休憩をとるようにして、体調によっては、中止しなければいけません。特に運動経験が少ない人は、リスクが高まります。暑い時に急に運動を始めるよりも、日頃から運動をし、体を慣れさせておく必要があります。

 

4 服装
吸水性や速乾性に優れている通気性の良い素材を選ぶようにしましょう。体を締め付けすぎないように気をつけ、熱を逃す工夫をします。淡い色の方が暑さを吸収しにくいので、白などの色を選ぶようにして、帽子や日傘で日差しを遮るようにします。

 

5 体調管理
疲労や体調不良が、熱中症の発生リスクを高めます。寝不足や食生活が乱れないように、日頃から体調管理を怠らないようにすることが大切です。

 

<予防する飲食物は>

熱中症を予防するためには、熱中症にかからないようにする体を作ることが大切です。その基本となるのが、食生活です。

 1日3食バランスのとれた食事と適度な水分補給によって、健康維持を心がけましょう。

 

■熱中症予防に良い食材
熱中症を予防する食事も基本は、5大栄養素をまんべんなく摂取するバランスのとれた食事です。暑いからといって、軽い食事だけで済ましていると、体力が低下し、暑さへの抵抗力が低くなってしまうので、しっかり食べるようにしましょう。夏に旬の食材は、体を冷やし、食欲を増進させる働きを持つものが多いので、
旬のものを積極的に食べるのがオススメです。また、積極的に摂ると良いのは、疲労回復を促すビタミンB1やクエン酸、汗で失ってしまうカリウムなどです。

 

■熱中症予防に良い飲み物
運動時は、良く冷やして吸収を良くしたスポーツドリンクや、水1リットルに、砂糖大さじ4、塩小さじ2分の1を加えた簡易の経口補水液を用意しておきましょう。運動前にコップ一杯程度、運動中はこまめに摂取を心がけます。運動後は、運動前の体重と比較して、減っているようなら、水分と食事で、体重を戻すようにします。日常生活では、スポーツドリンクは糖分が多量に含まれているので避けた方が良いです。ジュースも同様で、糖分の過剰摂取につながるので避けましょう。なるべくカフェインの含まれていないお茶や水を常温で飲むようにします。カフェインが含まれたお茶は、利尿作用があり水分を排出してしまいます。

 

<応急処置>

熱中症の症状は、刻一刻と進行していきので、発症後すぐの対応が非常に大切となります。一刻も早い対処のために、熱中症の応急処置は「FIRE」と覚えておくと良いでしょう。

 

実際にはこれを逆順で行います。

・E:Emergency 緊急事態の対応
まずは、意識の確認を行います。反応が無ければ、気道確保・呼吸の確認・心拍の確認と、緊急時の対応を行い、救急要請をします。意識があれば、名前や日付など簡単な質問で、意識障害がないかどうか見極めましょう。言動に異常があれば、すぐに搬送準備をします。

 

・R:Rest 安静
運動や労働を行っている場合にはすぐに中止し、休息をとります。日陰で風通しの良い場所や、冷房の効いた室内などに移動し、高温多湿の環境を改善して安静状態を保ちます。寝かせる時は、脳への血流が増えるように、仰向けで寝かせて足を高くするか、楽になれるよう横向きに寝かせます。

 

・I:Ice 冷却
衣類を緩め、靴は脱ぎ、なるべく熱が放散しやすい状態にします。水や濡れたタオルで体を濡らし、風を送ることで、気化熱により体から熱が奪われます。用意できる場合には、氷や冷えたペットボトルを利用して、脇の下や首を冷やします。

 

・F:Fluid 水分と塩分の補給
熱中症の場合には、水だけでなく、塩分を同時に摂取します。水1リットルに、砂糖大さじ4、塩小さじ2分の1を加えた簡易の経口補水液を準備しておくと良いでしょう。市販のスポーツドリンクには塩分が足りない商品もあるので、そうしたスポーツドリンクを飲む場合には、塩分を同時に摂取する必要があります。呼びかけに応じない場合や、吐き気がある場合など、自分で飲めない場合にはすぐに救急搬送し、点滴による水分補給が必要です。ここで無理に経口補水を行うと、誤飲する危険が高いので避けなければなりません。

 

■症状に合わせた対処

 

・掬
筋肉のけいれんやめまいの症状がみられたら、すぐに休息をとり、高温多湿の環境を改善し、衣服を着替えるなどして、体の熱を放散します。水分補給をして十分に症状が改善するまで安静状態を保ちます。症状が悪化するようであれば、すぐに病院に搬送する必要があるため、一人にしないようにして観察します。

 

・凝
頭痛・嘔吐・倦怠感などの症状が現れたら、直ちに高温多湿の環境を改善し、安静にします。自分で水分を補給できる場合には、水分と塩分の補給をし、病院に搬送します。重篤な状態に移行しなければ、数時間の経過観察で帰宅が可能です。
高齢者や持病がある場合や、経過が良好でない場合は、入院が必要になります。

 

・慧
意識障害があり、体温が40度以上、発汗の停止などの症状が現れたら、直ちに救急搬送の準備を整えて、急速に体を冷やします。救急隊が来るまでは、「FIRE」を実施し、悪化を防ぎます。意識が無い場合には、気道確保・呼吸の確認・心拍の確認が必要です。

 

<「環境」と「身体」の2大原因>

熱中症は、野外スポーツ時は注意されていることが多いのですが、室内や住居での発生も多く、誰にでも起こる危険があります。

しかし、同じ環境下にいても、熱中症になる人とならない人がいます。

熱中症の発症には大きく分けて「環境」と「身体」の2つの原因があります。

 

■原因1 環境
・気象
熱中症は高温・多湿の環境で多発します。特に風が弱く、日差しが強いなど条件がそろうと発生が増加します。

 

・時期
真夏の炎天下というイメージが強い熱中症ですが、実は6月頃から増え始めます。ピークは7月下旬で徐々に減っていきます。これは、体が暑さに慣れていないためです。梅雨明けで急激に気温が上がる頃に注意が必要です。

 

■原因2 身体の状態
・性差・年齢差
全体でみると男性の発生が多いとされます。乳幼児と高齢者は性別に関係なく発生が多い傾向にあります。特に高齢者は死亡率も高く注意しなければなりません。

 

・発生状況
乳幼児と高齢者においては、日常生活での発生が多いです。乳幼児の場合には、体温調整機能が未熟で発汗量が多いことが原因で発生します。自身で体調不良を訴えることができない事も多いので、よく観察が必要です。高齢者の場合には、住居での発生が多く、周囲が発症に気が付かないことも多く危険です。加齢によって暑さに対する感覚が鈍り、冷房を使ったり衣服を調整したりする対処が遅れることが原因ですので、周囲からの注意喚起が必要です。
その他、10代ではスポーツ時、40代・50代では労働中の発生が多い傾向にあります。

 

・持病
持病があり普段から薬を服用している、風邪をひいている、疲労がたまっているなど、抵抗力が低下している場合はリスクが高くなります。発熱や下痢をしている場合も脱水を起こしやすく危険です。発熱や下痢の症状が、すでに熱中症の症状である可能性もありますので、気をつけましょう。

 

(追記)

「夏血栓」について

熱中症慧戮禄転匹如熱射病に当てはまりますが、
|羶神経症状
肝臓・腎臓機能障害
7豈婉展念枉錣里Δ腺韻弔任眈評に見られる場合、慧戮反巴任気譴泙后

 

そのうち血栓形成(血管内でできる血の塊)も血液凝固異常のひとつで、「夏血栓」として別に扱われることがあります。

夏血栓とは、文字通り夏に起こりやすい血栓のことです。

心筋梗塞や脳梗塞などに代表される「血栓症」は、血液中にできた血栓が血管を詰まらせることにより起こる病気です。夏場の、特に気温が上昇した状態で、

発汗による脱水から血液がドロドロになって、血栓症は発症しやすくなります。

 

「血栓症による死亡率と気温に関する調査」によると、65歳以上の心筋梗塞患者は、気温が30度を超えると死亡率が上昇しています。また脳梗塞患者でも、気温が32度になるともっとも低い死亡率から1.66倍に跳ね上がっています。

 

今年の夏も猛暑となっており、熱中症への注意喚起が行なわれていますが、猛暑下で増加する「血栓症」への注意も必要です。

 

熱中症では、めまいや失神、吐き気、冷や汗、頭痛といった症状が見られますが、

実は夏血栓でも同じような症状が見られます。一般的に、血栓症は冬のイメージが強いのですが、夏血栓とは、大量に汗をかくことで、血液中の水分が減り

血栓ができやすいことが主な原因の、夏にも多く発症する血栓症のことです。

また、節電の影響で室内が高温になることが予想されるため、普段の生活からこまめに水分補給することを心がけましょう。

 夏血栓で、血管が詰まりやすくなる気温の目安は32度です。普段からこの目安の気温に注目し水分補給を増やすことは、夏の血栓予防には有益です。

 

さらに、ビールなどのアルコール飲料は、利尿作用があるため、体内の水分不足を引き起こし、血栓ができやすいドロドロした血液になる原因となりますので、注意しましょう。

 

 

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2018年7月西日本豪雨

2018年7月西日本豪雨で被災された皆様、お見舞い申し上げます。

 

2018年7月5日(木曜日)から降った豪雨はすさまじいものがありました。幸い、八幡浜市では一部の世帯が浸水したものの、大きな被害はありませんでした。

 

隣の大洲市は肱川(1級河川)が氾濫し、大洲市がほぼ全域にわたって洪水となりました。娘の勤務する大洲市にある喜多医師会病院が7月8日に新病院が立ち上がって内覧会が予定されていましたが中止となりました。新病院1階が、水につかりかろうじてMRIやCTなどの危機は無事でしたが、床の配線が壊れ診療開始が不可能な状態に陥っております。

 

多くの方にお見舞いメールをいただきましたが、幸い当クリニックが無事であってまずはホッとしています。患者さんの中には被害にあわれた方もあり、しばらくは間接的に診療に影響が出るものと思われます。このたびはご心配をおかけしました。

 

大洲市や広島、宇和島での被害のニュースを聞くたびに心が痛みます。これから本格的な猛暑になります。被災された方々のご自愛をお祈りいたします。

 

 

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医師法第二十条と死亡診断に関する誤解

在宅医療と医師法第二十条

 

先日、在宅医療で関わっておられる連携医師から、X日午後3時に最終診察した末期がんの患者様が、翌X+1日の午前10時にお亡くなりになったとのこと。連絡を受けたときは、所用で松山に出張されており、患家に赴くことができるのは、午後3時くらいになるが、死亡診断書はその時に発行してもよいかとの質問をいただきました。

この事例に関して、医師法:第二十条を引用します。

 

『医師法:第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。』

 

したがって、本事例では、最終診察から24時間以内にお亡くなりになっていますし、X日に余命がここ一両日中とご家族にもお話しされており、十分に近々の臨終が予測されていますから、死亡診断書は松山から帰られて発行することに何ら法的な問題はない旨お話させていただきました。

 

しかしながら、この法的な解釈は、最終診察から24時間経過後であっても、診療していた疾病で死亡した場合には、死後診察を行えば死亡診断書を発行することができます。その根拠は厚生省昭和24.4.14医発385号医務局長通知によって説明されています。下記に引用しました。

 

『医師法第二十条但書に関する件  

     (昭和二四年四月一四日 医発第三八五号)  

     (各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)  

 標記の件に関し若干誤解の向きもあるようであるが、左記の通り解すべきものであるので、御諒承の上貴管内の医師に対し周知徹底方特に御配意願いたい。  

                   記  

1 死亡診断書は、診療中の患者が死亡した場合に交付されるものであるから、苟しくもその者が診療中の患者であった場合は、死亡の際に立ち会っていなかった場合でもこれを交付することができる。但し、この場合においては法第二十条の本文の規定により、原則として死亡後改めて診察をしなければならない。  

  法第二十条但書は、右の原則に対する例外として、診療中の患者が受診後二四時間以内に死亡した場合に限り、改めて死後診察しなくても死亡診断書を交付し得ることを認めたものである。  

2 診療中の患者であっても、それが他の全然別個の原因例えば交通事故等により死亡した場合は、死体検案書を交付すべきである。  

3 死体検案書は、診療中の患者以外の者が死亡した場合に、死後その死体を検案して交付されるものである』

 

このように、受診後24時間以上を経過して死亡した場合には、死亡診断書ではなく死体検案書になる、ということは書いてありませんし、診療中の当該疾患で明らかに死亡された場合は、死後診察をしてそれが確認できれば死亡診断書を発行することができます。

 

一つの誤解は以下の事件に原因があるように思われます。

東京地裁八王子支部の昭和44327日の判決理由が影響を与えた事実が挙げられます(刑裁月報13313頁に掲載)。

『この事件は入院中の患者(女、63歳)が屋外療法実施中に行方不明となり、1日半か2日ぐらい経ってから、病院の北500メートルの国有林内の沢で死体として発見された。同病院に搬入された後同所で検案した際に、異状があると認めたにもかかわらず24時間以内に所轄警察署にその旨届出をしなかった。・・・死亡診断書に虚偽の記載をした上、市役所に提出した。』

という事件で、医師法違反、虚偽診断書作成、同行使、医療法違反で罰金2万円に処せられました。

 

この判決理由の中で次のようなことが述べられています。

「・・・特に右患者が少なくとも24時間をこえて医師の管理を離脱して死亡した場合には、もはや診療中の患者とはいい難く、したがってかかる場合には当該医師において安易に死亡診断書を作成することが禁じられている(医師法20条参照)のであるから、死体の検案についても特段の留意を必要とするといわねばならない。」

この判決が、「死後24時間以内に診察をしなかったら検案になる」という解釈の普及に拍車をかけたように思われます。

 

在宅医療での看取りに関する死亡診断の誤解から、在宅医療に踏み出せない医師も多いのではないでしょうか。

 


 

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「訪問診療」と「往診」ってどこが違うの?


「往診」と「訪問診療」の違いについて

 

先日、ある機関から在宅医療・介護サービスの充実を目指して、医療機関・介護サービス機関のマップを作成したい旨連絡をいただきました。

医療機関の情報の項目で「往診の有無」を記載する欄がありましたが、「訪問診療の有無」を記載する欄はなく、どうも「往診」と「訪問診療」を同一に考えられているように思われましたので、担当の方に電話で真意を問い合わせました。

 

「訪問診療」という言葉が、誰にも知られていないので「往診」という言葉を使用したとのことです。しかも、小学生でもわかる言葉にしないといけないのでとも言われました。

ならば、なおさらのこと二つの診療形態の違いを教育的にも理解してもらうことがこれからの超高齢社会を支える子供たちにも伝える必要があるのではと感じました。

大人の間違った理解の上で、「小学生でもわかる言葉」を使うというのはどうも私にとっては理解に苦しむところです。

 

「往診」と「訪問診療」の違いについて述べてみたいと思います。

どちらも医師に病状を診てもらう点では、変わりがないのですが、全く違った医療サービスです。

医療制度上の問題から高齢者の方々がこれまで療養的に利用されていた病院への入院が制約されてきている一方、ご自宅や有料老人ホーム、グループホームなどといった高齢者向けの施設で療養されることが年々、増えてきております。

そこで、本来、病院で受けられた医療サービスを高齢者の方々が療養、住まわれているところで提供させて頂くものが「在宅医療」といわれるもので、在宅医療を大別すると「訪問診療」と「往診」とに分けられます。
では、「訪問診療」と「往診」とでは、何が違うのでしょうか。

 

訪問診療とは、計画的な医療サービス(=診療)を行うことです。

月に2度の訪問診療を行うため、容態悪化の予防や施設にいながらの長期療養も可能になります。

毎週○曜日の○時にと約束して医師が訪問の上、診療します。1週間ないし2週間に1回の割合で定期的、且つ、計画的に訪問し、診療、治療、薬の処方、療養上の相談、指導等を行っていきます。

また、患者さまやご家族の方からご相談を受けた時点で、これまでの病歴、現在の病気、病状などを詳しく伺うとともに、関係医療機関などから情報収集を図ります。その上で、どのような治療を受けられたいか、ご家族の介護力や経済的な事情なども詳しく伺いながら、診療計画、訪問スケジュールをたてていきます。

尚、急変時には緊急訪問に伺ったり、入院の手配を行ったりするなど、臨機応変に対応することからも、「第一のかかりつけ医」として、多くの場合、24時間体制で在宅療養をサポートするのが、訪問診療の特色です。

 

往診とは困ったときの臨時の手段

一方、往診とは、通院できない患者さまの要請を受けて、医師がその都度、診療を行う事です。

現行の往診対応では状態悪化時の対応のみとなるためすぐに入院してしまうケースが多いです。

突発的な病状の変化に対して、救急車を呼ぶほどでもない場合など、普段からお世話になっているホームドクターにお願いして診察に来てもらうもので、基本的には困ったときの臨時の手段です。

当院では、外来通院中の患者さまで往診依頼があった時、電話で状態を確認し日勤帯であれば看護師がまず訪問し、急を要する状態であれば検査など必要ですから原則来院していただきます。24時間電話対応はしており、適切なアドバイスに努めています。

 

 

 

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平成29年3月、改正道路交通法施行に思う

 

認知症高齢者の排除が始まる?

 

平成29312日、改正道路交通法が施行されました。2016918日に発表された総務省統計局のデータによれば日本の65歳以上(高齢者)の人口は2016915日時点で3461万人となり、総人口比は27.3%となることが分かりました。21%を超えた社会を「超高齢社会」といいますが、「超高齢社会」の日本が抱える難題は山積しています。

 

高齢者による交通事故もそのひとつです。これまでの道交法では75歳以上のドライバーに対し、3年ごとの運転免許更新時に認知機能検査が実施されていました。それにより「認知症の恐れがある」(1分類)「認知機能が低下している恐れがある」(2分類)「低下の恐れなし」(3分類)の3段階による判定が行われています。

 

しかし、認知症の疑いが強い「1分類」に判定されても、信号無視などの違反をしていなければ医師の診断は不要で、運転を続けられました。2013年の免許更新時の検査では、1分類と診断されたのは約35000人。そのうち、違反があって医師の診断書を提出したのは524人で僅か1.5%。診察で認知症と診断され、運転免許が取り消しや停止処分となったのは118人でした。

 

今回の改正では、認知機能検査で「1分類」に判定された場合は、医師の診断を義務とし、認知症と診断されれば免許取り消しや停止処分となりますそれに対して精神科医ら16000人でつくる日本精神神経学会は23日、「認知症と危険運転との因果関係はまだ分かっていない」とする意見書を警察庁に提出しました。高齢者の交通事故増加はあくまで、社会全体の高齢者の割合が増加しているためだとしています。

 

 意見書では「特定の病名を挙げて免許を制限することは、患者への差別」と主張。認知症診断の判断材料となる短期記憶障害も、運転に与える影響は少ないと指摘しています。さらに医師は「疑い」も含めて病気と診断する傾向があるため、運転に支障がない人の運転の権利までが剥奪されることを危惧しています。

  

2014年に死亡事故を起こした75歳以上の高齢者の約4割が、認知機能検査で第1と第2分類だったとのことですが、それは裏を返せば6割の死亡事故は認知機能検査で問題ないとされた第3分類の高齢者が起こしたもの、ということでもあります。もし高齢者の運転による死亡事故全体を減らしたいのであれば、「第3分類の人達に免許を返上して貰えばいいのではないだろうか」という論理が成立します。当然そんなことはできません。

しかしながら認知症患者さんの免許返上に対しては「病気だからしょうがないよね・・・」で済まされ、管理する側にとっては手っ取り早く免許を取り上げることが可能となり、1分類や第2分類の人達は「認知機能検査の点数が低かった人達」ということで、一括りにしやすくなります。カットオフの点数を1点下回ろうが10点下回ろうが、同じ「認知機能検査の点数が低かった人達」というカテゴリーで括ることが出来ます。

 

地方で生活する高齢者にとって、主な移動手段である車の運転を続けられるかどうかは、文字通り「死活問題」であります。都会と違って公共交通機関は発達しておらず、数少ない路線も採算がとれなければ容赦なく撤廃されます。このような環境では、車は正に「命綱」です。

 

私は佐田岬半島の旧瀬戸町で僻地医療に従事していましたが、町内には信号もなく高齢者はほとんど事故もなく運転をされていました。長年やってきて定着している「手続き記憶」に頼るところが大きいからでしょう。

 

(いい介護どっとこむより引用)

 

少し古いデータ(現在では、このグラフより上方修正されています)ではありますが、これは認知症患者数の推移を示す2008年のグラフです。このグラフから2005年から2015年にかけて、約50万人患者数が増えています。

 

(社会実験データ図録より引用

 

そしてこれは、人口10万人当たりの交通事故死亡者数の推移をみたグラフ。平成17年からの10年間で、全年齢層と65歳以上、いずれも40%以上交通事故死亡者数は減少しています。

 これらの二つのデータから分かるように、少なくとも今の時点では認知症患者さんが増加すると共に、死亡事故全体が増えているわけではありません。

 

 平成24年の65歳以上のドライバーの交通事故件数は、10万2997件。10年前の平成14年は8万3058件だから、比較すれば約1.2倍に増えています。これだけを見れば確かに「高齢者の事故は増えている」と思ってしまうでしょう。しかし、65歳以上の免許保有者は平成14年に826万人だったのが、平成24年には1421万人と約1.7倍となっています。高齢者ドライバーの増加率ほど事故の件数は増えていません。
 

また、免許保有者のうち65歳以上の高齢者が占める割合は17%。しかし、全体の事故件数に占める高齢者ドライバーの割合は16%で、20代の21%(保有者割合は14%)、30代の19%(同20%)に比べても低いことがわかります。

 

(社会実験データ図録より引用)  

 

こちらは、死亡事故を起こした運転者の年齢層別死亡事故件数のグラフですが、24歳以下と75歳以上という明確な二層化が見てとれます。この二層化は常識的に考えると、運転年数の短い若者は無謀な運転をしやすく、高齢者は判断力が落ちて事故を起こしやすいということだと思います。ただし、85歳以上は全ての年代の中で最も事故件数の割合が高くなっています。

 

(認知症スタジアムより引用)

 

年代別の認知症高齢者の割合を見ると、85~89歳の高齢者の41.4%は認知症とされます。

これは、80~84歳における21.8%と比較して、およそ倍です。倍増というデータは重視する必要があります。85歳以上になれば認知症の影響で事故を起こす危険性はかなり高くなってくると言えるのかもしれません。

 

ところで、高齢者が交通事故を起こす原因は様々でしょうが、認知症の方が交通事故を起こした場合、その原因を果たして認知症だけに求めることが可能なのでしょうか。信号を無視してしまったとき、それは「認知症だから信号を無視した」と判断出来るでしょうか。健常高齢者が信号を無視した場合、それは「うっかりしていた」で済まされるでしょう。 認知症患者が「うっかりしていた」と言っても、それは「認知症だからうっかりしてしまった」とされるのでしょうか。

 

認知症と診断して運転免許を取り消すということは、非常に重大な行為です。特に、車に替わる移動手段の選定や、どのようにして生活物資を確保するかなど、代替案のないまま運転免許が取り消されるようなことがあってはなりません。

その代替案は、医療や福祉、民間サービス会社、行政、勿論警察も含めて、つまり社会全体で考えていくべきものです。だからこそ医療機関への診断丸投げや押し付け合いのようなことは止めていただきたいのです。

 

以上述べてきたことより、高齢者が起こす交通事故は、認知症が主な原因ではないと言えるのではないでしょうか。日本精神神経学会の法委員会担当理事で精神科医の三野進氏は「そもそも年をとれば視力や聴力も落ち、運転は危なくなりがち。総合的な危険性を判断する対策が必要で、認知症だけを排除しても意味がない」と言います。まさにその通りだと考えます。

 

| 院長ブログ | 17:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

2016年12月開業満6年終了月、121人目の看取り

女性の死因、アルツハイマーが初めて10

 

 女性の死因のうちアルツハイマー病の死亡率が上昇し、2015年には死因順位の中で上位10位の中に初めて入ったことが、厚生労働省がまとめた人口動態統計(確定数)で明らかになりました。死亡率は統計上、年々上昇しており、専門家はアルツハイマーについても認知症としてだけでなく、死亡率の高い全身病として認識を改める必要性を訴えています。

 

 厚労省は同統計の死因について、直接の死亡原因となった病気などの事象を引き起こす元になった疾病と定義。例えば、直接の死因が肺炎など別の疾患でも、それを誘引したのがアルツハイマー病なら、アルツハイマー病を死因と見なすという方法で統計しています。

 

 同統計によると、15年の男女合わせた死亡者数は1544人、死亡率(人口10万人対)は8.4でした。2000年には0.7でしたが、10年には3.3と上昇しています。男性は、2000年に0.5102.5155.4と徐々に高くなっていましたが、女性では20000.810年に4.1となり、その後も115.5127.0138.51410.0と上昇が顕著で、15年には11.2と死因の10位にランクされました。

 

 男女共に死因の1位は悪性新生物、2位が心疾患。その他、肺炎、脳血管疾患などが上位を占めて、大きな違いはありませんが、女性の場合はアルツハイマー病のほかに血管性等の認知症の死亡率も男性より高く、15年は12.4と前年に続いて9位でした。男性は、5.210位までには入っていません。

 

 アルツハイマー病は、脳の中のタンパク質の異常な沈着により、健康だった神経細胞が効率よく機能しなくなり、最終的には死滅する病気。この過程で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され、日常生活の最も単純な作業を行う能力も失われていきます。高齢者に発症する例が多いのも特徴です。

 

 アルツハイマー病による脳細胞の脱落で、認知機能だけでなく、運動機能、特に嚥下などの微細な運動をつかさどる脳神経細胞や、心臓や呼吸を制御する自律神経機能も落ちていきます。認知機能だけでなく、生体維持機能も低下する死亡率の高い病態であるというように認識を改める必要があります。

 

昨日、在宅医療で関わっていたアルツハイマー病の男性(83歳)がお亡くなりになりました。当クリニックはこの年末で開業後満6年が終わります(201111日開業)。この6年で、在宅で看取った人数はこの方でちょうど121人目となりました。

 

次第に脆弱になり、寝たきり、嚥下障害の進行から栄養障害も高度となり、火が消えるようにお亡くなりになりました。死亡診断書には直接死因の項目に「老衰」と記載しました。しかしながら、明らかにアルツハイマー病を基礎にした終末でしたが、これまで同様の状態像の看取りでは「老衰」と書くことがほとんどでした。ところが、厚生労働省の死因順位の発表を見て、アルツハイマー病と記載してもいいのだと認識を新たにしています。

 

 

| 院長ブログ | 22:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

病棟から見た景色ー開業6年目にして

 

入院して考えたこと(平成28年7月28日から31日)

 

平成24年1月、白内障の手術のため入院して以来、2度目の入院になってしまいました。平成23年に開業し総合診療外来と在宅医療、とくにがん緩和ケアと認知症をライフワークと位置づけて、言葉は悪いですが多くの方(専門職)を巻き込みながら歩んできました。この6月下旬から7月上旬にかけて深夜の看取りが続き、睡眠不足に加えて母の緊急入院などが重なり40度近い発熱を2度繰り返し、激しい下痢嘔吐で脱水症状となり、ついに妻と娘からドクターストップをかけられ入院することになってしまいました。

 

輸液と適切な治療で症状は軽快。脱水による症状のひどさ・強烈な全身倦怠感と足腰に全く力が入らなかったことにはさすがに降参してしまいました。7月31日朝、最終の抗生剤の点滴が終了し持続点滴も外れ、午後には退院できることになりひとまずホッとしています。

 

4日間の入院ではありましたが、この入院で6年目にしてこれまでの生活態度、診療態度の反省しきりでした。今後自己制御をしなければライフワークと位置付けた立ち位置も揺らいでしまうことになりかねません。今までのエネルギーは保全しながら適切な自己制御をするという一見矛盾するような思考ですが、合理的な動きを工夫すればこれは可能だと思っています。

 

2025年問題に向けて、医療制度は大きく変わろうとしています。クリニックのホームぺージ上でも近々「総合診療医のための診療支援」というページを新設し、自分のこれまで培ってきた経験と知識に最新のエビデンスにもとづく知見を加えて掲載しようと考えています。これは自分の知識の再整理の役割も兼ねており、現場で困った時にすぐ見て役立つものにしたいと考えています。構成デザインをしてくれるスタッフも見つかりいいものを作ろうと思います。

 

この4日間、私の患者さん、家族、クリニックのスタッフの皆さん、連携する先生方、連携する他職種の方々にはご心配をおかけしました。明日からまたよろしくお願い申し上げます。(2016年7月31日)

 

| 院長ブログ | 09:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

がん緩和ケアの現場に必要なチームとは

学際的チームと多職種チーム

医療現場、特にがんの終末期の人には様々なニーズが生じます。1人の専門家がそのすべて に対応することは不可能です。現代医療は一般に、チーム医療によって成り立っていますが、緩和ケアにとってもチーム医療は必要不可欠なものです。

チームは一般的に次のように定義されます。共通の目標や達成目標に向けて、それぞれのメンバーが補完的な責任を果たしていく相補的な技術を持つ少数の人の集まりです。1人ひとりのメンバーが互いを知り、すべてのメンバーが共通の目標に貢献しなければなりません。

しかし、多くのチームは、真のチームではなくクルーとしてとらえられています。典型的な例は航空機のクルーを考えてください。それぞれのメンバーは責務を果たしますが、それぞれのメンバー間は最小限のコミュニケーションを図るのみです。クルーメンバーは同じトレーニングを受ければ他の者でも容易に代わりえます。

しかし、クルーメンバーではなく真のチームメンバーはその知識と技術ゆえに選ばれたものであるため、容易に代わりは見出せません(文献;Kane RA : The interprofessional team as a small group. Soc Work Health Care1 : 19-32,1975)。
  チーム医療のあり方には、学際的チーム(interdisciplinary team)と多職種チーム(multidisciplinary team)がありますが、緩和ケアにおいては前者の学際的チームが望ましいとされています(文献;Haugen DF et al : The core team and the extended team. Oxford Textbook of Palliative Medicine. 4th Ed ,Hanks G et al(eds),Oxford University Press , Oxford , p167-176,2010)。

多職種チームでは、メンバーは専門性に応じて部分的に、独立した立場で援助・協力しますが、治療方針を決定するのは1人のリーダー(多くは医師)です。それに対して学際的チームでは、メンバー全員が共通の目標を共有し、治療方針の決定はメンバーで話し合い相互依存的に行われます。リーダーは1人ではなく、状況や課題の内容により変化します。
そのような視点にたつと、医療・介護保険制度の中で、がん・非がんに関わらず在宅で患者さん・利用者さんを診る(看る)とき、がんコーディネーター、ケアマネージャーの役割に期待される部分は極めて大きいと言えます。


 
 




 
| 院長ブログ | 08:50 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

認知症医療:「告知」と「覚悟」

「覚悟」のうえに成り立つ関係性

認知症医療での「告知」と「覚悟」というテーマで考えてみたいと思います。
参加者は限定的ですが、毎月第1金曜日のがん緩和ケア症例検討会は5月で第26回目となりました。
この会でも、がんの予後の「告知」についてしばしば大激論になることがあります。
 
予後の長短はあるものの、認知症の支援においても「告知」と「覚悟」が不可欠です。中島先生は「本来、緩和ケア、難病ケアにおける告知の目的は、患者との信頼関係を作ることにある」(中島 孝:緩和ケアとは何か. 難病と在宅ケア, 9(8) : 7-11, 2003.) と述べています。相手を思いやりながら伝える過程で、医療従事者は患者さん、家族から信頼を得ます。不可逆的に悪化していく病態に対して適切な援助を継続するためには、この信頼関係が不可欠であり、だからこそ告知は重要だと思うのです。
 
認知症医療で告知の一番の目的は、「疾患の受容」や「死の受容」ではなく、患者さん、家族との信頼関係のもとで、認知症になってもひとは生きている限り適切なケアが受けられ、幸福にすごせるという価値の共有にあると思います。避けられない病態の進行、老化と寿命としっかり向き合いながら、治せないことを共有したうえで、最期までどう生きるかを本人、家族と一緒に考えていく姿勢が大切です。
 
そして、この「告知」を行うことは、同時に「覚悟」を求められます。いつか必ず訪れる”天寿”や”看取り”という”ゴール”を、本人も家族も「理解」するのではなく「覚悟」するのです。覚悟が決まれば大抵のことは乗り越えられるものです。そして、この「覚悟」は私たち支援者にも求められます。主治医は初診で「初めまして」の瞬間から看取ることを、施設職員は入所の時点から「巡回時に亡くなっている日がくること」を覚悟すべきです。
また、認知症で独居の方の在宅支援の最期は、ヘルパーさんが訪問した際に「眠るように亡くなっている形」で終わるものです。これらは、本人や家族、そして私たち支援者の「覚悟」のうえに成り立つ関係性なのではないでしょうか。

 
| 院長ブログ | 12:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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