2016年12月開業満6年終了月、121人目の看取り

女性の死因、アルツハイマーが初めて10

 

 女性の死因のうちアルツハイマー病の死亡率が上昇し、2015年には死因順位の中で上位10位の中に初めて入ったことが、厚生労働省がまとめた人口動態統計(確定数)で明らかになりました。死亡率は統計上、年々上昇しており、専門家はアルツハイマーについても認知症としてだけでなく、死亡率の高い全身病として認識を改める必要性を訴えています。

 

 厚労省は同統計の死因について、直接の死亡原因となった病気などの事象を引き起こす元になった疾病と定義。例えば、直接の死因が肺炎など別の疾患でも、それを誘引したのがアルツハイマー病なら、アルツハイマー病を死因と見なすという方法で統計しています。

 

 同統計によると、15年の男女合わせた死亡者数は1544人、死亡率(人口10万人対)は8.4でした。2000年には0.7でしたが、10年には3.3と上昇しています。男性は、2000年に0.5102.5155.4と徐々に高くなっていましたが、女性では20000.810年に4.1となり、その後も115.5127.0138.51410.0と上昇が顕著で、15年には11.2と死因の10位にランクされました。

 

 男女共に死因の1位は悪性新生物、2位が心疾患。その他、肺炎、脳血管疾患などが上位を占めて、大きな違いはありませんが、女性の場合はアルツハイマー病のほかに血管性等の認知症の死亡率も男性より高く、15年は12.4と前年に続いて9位でした。男性は、5.210位までには入っていません。

 

 アルツハイマー病は、脳の中のタンパク質の異常な沈着により、健康だった神経細胞が効率よく機能しなくなり、最終的には死滅する病気。この過程で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され、日常生活の最も単純な作業を行う能力も失われていきます。高齢者に発症する例が多いのも特徴です。

 

 アルツハイマー病による脳細胞の脱落で、認知機能だけでなく、運動機能、特に嚥下などの微細な運動をつかさどる脳神経細胞や、心臓や呼吸を制御する自律神経機能も落ちていきます。認知機能だけでなく、生体維持機能も低下する死亡率の高い病態であるというように認識を改める必要があります。

 

昨日、在宅医療で関わっていたアルツハイマー病の男性(83歳)がお亡くなりになりました。当クリニックはこの年末で開業後満6年が終わります(201111日開業)。この6年で、在宅で看取った人数はこの方でちょうど121人目となりました。

 

次第に脆弱になり、寝たきり、嚥下障害の進行から栄養障害も高度となり、火が消えるようにお亡くなりになりました。死亡診断書には直接死因の項目に「老衰」と記載しました。しかしながら、明らかにアルツハイマー病を基礎にした終末でしたが、これまで同様の状態像の看取りでは「老衰」と書くことがほとんどでした。ところが、厚生労働省の死因順位の発表を見て、アルツハイマー病と記載してもいいのだと認識を新たにしています。

 

 

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病棟から見た景色ー開業6年目にして

 

入院して考えたこと(平成28年7月28日から31日)

 

平成24年1月、白内障の手術のため入院して以来、2度目の入院になってしまいました。平成23年に開業し総合診療外来と在宅医療、とくにがん緩和ケアと認知症をライフワークと位置づけて、言葉は悪いですが多くの方(専門職)を巻き込みながら歩んできました。この6月下旬から7月上旬にかけて深夜の看取りが続き、睡眠不足に加えて母の緊急入院などが重なり40度近い発熱を2度繰り返し、激しい下痢嘔吐で脱水症状となり、ついに妻と娘からドクターストップをかけられ入院することになってしまいました。

 

輸液と適切な治療で症状は軽快。脱水による症状のひどさ・強烈な全身倦怠感と足腰に全く力が入らなかったことにはさすがに降参してしまいました。7月31日朝、最終の抗生剤の点滴が終了し持続点滴も外れ、午後には退院できることになりひとまずホッとしています。

 

4日間の入院ではありましたが、この入院で6年目にしてこれまでの生活態度、診療態度の反省しきりでした。今後自己制御をしなければライフワークと位置付けた立ち位置も揺らいでしまうことになりかねません。今までのエネルギーは保全しながら適切な自己制御をするという一見矛盾するような思考ですが、合理的な動きを工夫すればこれは可能だと思っています。

 

2025年問題に向けて、医療制度は大きく変わろうとしています。クリニックのホームぺージ上でも近々「総合診療医のための診療支援」というページを新設し、自分のこれまで培ってきた経験と知識に最新のエビデンスにもとづく知見を加えて掲載しようと考えています。これは自分の知識の再整理の役割も兼ねており、現場で困った時にすぐ見て役立つものにしたいと考えています。構成デザインをしてくれるスタッフも見つかりいいものを作ろうと思います。

 

この4日間、私の患者さん、家族、クリニックのスタッフの皆さん、連携する先生方、連携する他職種の方々にはご心配をおかけしました。明日からまたよろしくお願い申し上げます。(2016年7月31日)

 

| 院長ブログ | 09:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

がん緩和ケアの現場に必要なチームとは

学際的チームと多職種チーム

医療現場、特にがんの終末期の人には様々なニーズが生じます。1人の専門家がそのすべて に対応することは不可能です。現代医療は一般に、チーム医療によって成り立っていますが、緩和ケアにとってもチーム医療は必要不可欠なものです。

チームは一般的に次のように定義されます。共通の目標や達成目標に向けて、それぞれのメンバーが補完的な責任を果たしていく相補的な技術を持つ少数の人の集まりです。1人ひとりのメンバーが互いを知り、すべてのメンバーが共通の目標に貢献しなければなりません。

しかし、多くのチームは、真のチームではなくクルーとしてとらえられています。典型的な例は航空機のクルーを考えてください。それぞれのメンバーは責務を果たしますが、それぞれのメンバー間は最小限のコミュニケーションを図るのみです。クルーメンバーは同じトレーニングを受ければ他の者でも容易に代わりえます。

しかし、クルーメンバーではなく真のチームメンバーはその知識と技術ゆえに選ばれたものであるため、容易に代わりは見出せません(文献;Kane RA : The interprofessional team as a small group. Soc Work Health Care1 : 19-32,1975)。
  チーム医療のあり方には、学際的チーム(interdisciplinary team)と多職種チーム(multidisciplinary team)がありますが、緩和ケアにおいては前者の学際的チームが望ましいとされています(文献;Haugen DF et al : The core team and the extended team. Oxford Textbook of Palliative Medicine. 4th Ed ,Hanks G et al(eds),Oxford University Press , Oxford , p167-176,2010)。

多職種チームでは、メンバーは専門性に応じて部分的に、独立した立場で援助・協力しますが、治療方針を決定するのは1人のリーダー(多くは医師)です。それに対して学際的チームでは、メンバー全員が共通の目標を共有し、治療方針の決定はメンバーで話し合い相互依存的に行われます。リーダーは1人ではなく、状況や課題の内容により変化します。
そのような視点にたつと、医療・介護保険制度の中で、がん・非がんに関わらず在宅で患者さん・利用者さんを診る(看る)とき、がんコーディネーター、ケアマネージャーの役割に期待される部分は極めて大きいと言えます。


 
 




 
| 院長ブログ | 08:50 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

認知症医療:「告知」と「覚悟」

「覚悟」のうえに成り立つ関係性

認知症医療での「告知」と「覚悟」というテーマで考えてみたいと思います。
参加者は限定的ですが、毎月第1金曜日のがん緩和ケア症例検討会は5月で第26回目となりました。
この会でも、がんの予後の「告知」についてしばしば大激論になることがあります。
 
予後の長短はあるものの、認知症の支援においても「告知」と「覚悟」が不可欠です。中島先生は「本来、緩和ケア、難病ケアにおける告知の目的は、患者との信頼関係を作ることにある」(中島 孝:緩和ケアとは何か. 難病と在宅ケア, 9(8) : 7-11, 2003.) と述べています。相手を思いやりながら伝える過程で、医療従事者は患者さん、家族から信頼を得ます。不可逆的に悪化していく病態に対して適切な援助を継続するためには、この信頼関係が不可欠であり、だからこそ告知は重要だと思うのです。
 
認知症医療で告知の一番の目的は、「疾患の受容」や「死の受容」ではなく、患者さん、家族との信頼関係のもとで、認知症になってもひとは生きている限り適切なケアが受けられ、幸福にすごせるという価値の共有にあると思います。避けられない病態の進行、老化と寿命としっかり向き合いながら、治せないことを共有したうえで、最期までどう生きるかを本人、家族と一緒に考えていく姿勢が大切です。
 
そして、この「告知」を行うことは、同時に「覚悟」を求められます。いつか必ず訪れる”天寿”や”看取り”という”ゴール”を、本人も家族も「理解」するのではなく「覚悟」するのです。覚悟が決まれば大抵のことは乗り越えられるものです。そして、この「覚悟」は私たち支援者にも求められます。主治医は初診で「初めまして」の瞬間から看取ることを、施設職員は入所の時点から「巡回時に亡くなっている日がくること」を覚悟すべきです。
また、認知症で独居の方の在宅支援の最期は、ヘルパーさんが訪問した際に「眠るように亡くなっている形」で終わるものです。これらは、本人や家族、そして私たち支援者の「覚悟」のうえに成り立つ関係性なのではないでしょうか。

 
| 院長ブログ | 12:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

認知症を治療するとは?

治療開始1年後の抗認知症薬の服薬継続率は半数に満たない

国民の2人に1人が罹患し、死亡原因の第2位を占める「がん」では、本人の意思を尊重し「在宅医療」や「看取り」の環境は整いつつあります。しかし一方で、軽度認知障害(MCI)を含めると65歳以上の約3分の1人が対象になる認知症においてはどうでしょうか?
がんと認知症、いずれも人生のまとめの時期において、本人にも家族にも多大な影響を与える”2大国民病”であるにも関わらず、認知症支援の在り方はずいぶんと出遅れています。
 
胃瘻などの医療技術の進歩が”天寿”より”長寿”を追究するなかで、意思決定が困難となった高度認知症状態では、最期は家族の意思が反映されることが多く、認知症の治療は「何のため」「誰のため」に行われるのか?自問自答することが時にあります。
 
近年、抗認知症薬が多数発売され、認知症治療は大きな進歩を遂げています。しかしながら、一方で、治療開始1年後の抗認知症薬の服薬継続率は半数に満たないとの報告があります(Watanabe N,Yamamura K,Suzuki Y,et al : Pharmacist-based Donepezil Outpatient Consultation Service to improve medication persistence. Patient Prefer Adherence6 : 605-611, 2012) 。
実際に、近医で早期から治療を開始していたにも関わらず、自己中断し、進行してから当院の「もの忘れ外来」受診するケースに遭遇します。
 
治療を中断した多くが「よくならない」からという理由です。これは治療の意義が充分に説明されていなかったことにあると思われます。「とにかく薬を飲みましょう」「薬を飲むことで進行を遅らせましょう」「とにかく続けましょう」という医療者側の言葉は、本人や家族にとっては「見えない”ゴール”」に向かって走り続けることを強いられているように感じるのではないでしょうか?42.195劵泪薀愁鵑癲▲粥璽襪あるからこそ頑張ることができるのではないでしょうか。

 












アルツハイマー博士
| 院長ブログ | 15:48 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

インフルエンザ流行期だからこその咽頭炎再考

咽頭炎:細菌感染症? ウイルス感染症?

2月6日、小学生のインフルエンザA・B重複感染をブログで記述して以来、インフルエンザの患者さんが押し寄せるようになりました。

http://blog.asahimachi-gp-clinic.com/?eid=156

当院のスタッフも2名がB型インフルエンザで休まざるをえなくなり、1名が疑いで休んでいます。
インフルエンザはウイルスですが、ウイルス感染は他臓器に及ぶというのが症状の特徴で、インフルエンザでは上気道の症状以外に全身の関節痛や、全身倦怠感など特定の臓器のみの症状に限局しません。
それに対して、細菌感染は「1つの臓器に1つの菌」というのが特徴です。
インフルエンザ様の症状で「咽頭痛」に関して細菌感染症として見逃してはならない重要でポピュラーな疾患があります。それは、皆さんもよくご存知の「溶連菌性咽頭炎」です。
センター基準;Centor Criteria  (センター先生が提示した溶連菌感染症を考慮して抗生剤を使用するか否かの基準)で、以下の通りですが、当院の患者さんは高齢者が多く、溶連菌感染症の方は皆無と言っていいほどですが、インフルエンザ流行期は、受診患者さんの平均年齢が若くなりますので、溶連菌性咽頭炎も考慮に入れておく必要があります。

【センター基準】
  1. 急性溶連菌性咽頭炎の診断はCentor Criteriaをもとに行う。
  1. 発熱38℃以上:1点
  1. 咳がない:1点
  1. 圧痛を伴う前頚部リンパ節腫脹:1点
  1. 白苔を伴う扁桃腺炎:1点
  1. 3〜14歳:+1点
  1. 15〜44歳:0点
  1. 45歳〜:−1点
  1. Centor Criteriaで4点以上の場合は、抗菌薬治療を行う。
  1. 2〜3点の場合は迅速検査を行い、陽性の場合は抗菌薬治療を行う。 
  1. 0〜1点の場合は、急性咽頭炎の可能性は低い。


連鎖球菌


インフルエンザウイルス
 
| 院長ブログ | 22:37 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

抗認知症薬による薬物療法を始める前に

抗認知症薬による薬物療法の基本的な考え方

2015年5月24日付けの私のブログで、ポリファーマシーについて記述しました。
 

http://blog.asahimachi-gp-clinic.com/?month=201505
 2015.05.24 Sunday
ポリファーマシー;高齢者の複数医療機関受診の問題点
複数の医療機関にかかることで生じる患者さんの不利益
 
物忘れ外来を受け持っている立場から、初診高齢者の方で複数科の受診によるポリファーマシー状態の方が多くおられます。物忘れからくる服薬アドヒアランスの問題(服薬忘れや過剰服薬など)から、なるべく服薬数は最低限度の数に、しかも1日1回で完結する服用内容になるよう工夫をしています。
 
処方薬剤数と認知機能障害の可能性について検討した文献を紹介します。
認知症診療で気を付けていることは、抗認知症薬を投与する以前に、薬剤に起因する認知機能障害の可能性について検討することです。
 
薬剤起因性の認知障害は決して稀ではありません。特に抗コリン作用がある薬剤は、認知機能障害が出現しやすいです。また薬剤数が多いほど認知機能障害のリスクが高まります。
 
Larsonら(以下に文献名を記載)によれば、薬剤数が2〜 3剤では2.7倍に、4〜 5剤では9.3倍に、6剤以上では13.7倍に上昇すると報告しています。最近は副作用の軽い薬剤が次々と上市されているため, この数値をそのまま当てはめることはできませんが、抗認知症薬を投与する前に、可能な限り併用薬剤数を減らすことは重要です。
 
Larson EB,et al:Adverse drug reactions associated with global cognitive impairment in elderly persons.Ann lntern Med, 107:169-173, 1987,

 

 
| 院長ブログ | 16:35 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

A型、B型インフルエンザの同時混合感染

遅ればせながらインフルエンザ・アウトブレイクも時間の問題か

本日、2月6日土曜日、午後5時30分診療終了間際に、9歳小学校児童が39.5℃の発熱と全身倦怠で飛び込み受診されました。
インフルエンザを疑い、迅速診断キット検査を実施。結果は、A型、B型インフルエンザの同時感染でした。
キット検査ですのでAまたはBどちらか一方の擬陽性の可能性は残りますが、同時感染はこれまでもいくつかの報告があります。
 
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0790110877.pdf
 
http://singlelife50.com/infuru/
 
八幡浜圏内でのインフルエンザ・アウトブレイクは時間の問題と思われます。
皆さん、ぜひお気を付けください。


 
| 院長ブログ | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

「患者中心の医療」から「コンコーダンス・モデル」へ

八幡浜在宅医療研究会メーリングリストから
 
http://blog.asahimachi-gp-clinic.com/?eid=154
のブログについての、MLでのスレッドをまとめました。
 
在宅医療の質を高めるためにも、また本人、家族、関係するスタッフが安心して前に進むためにも、バックアップ病院の重要性をいつも感じています。
 
2年前、ケアマネージャーさんを対象にした勉強会でも紹介したのですが、がん緩和ケアを実践するとき、患者さん中心から患者さんもチームの一員と捕らえるコンコーダンス・モデルの考え方に基づいたかかわりが大切だと言われるようになっています。
従来は、患者さんや家族が中心にいて、周りからチームで支えているというチーム医療の図が提唱されていました(上の図)。最近では、患者・家族も外の輪に入れるという考え方が出てきています。
 
実際に症状が一番分かっている専門家は患者本人ということで、「コンコーダンス・モデル」と呼ばれています(下の図)。日本語では「調和」という意味で、患者や家族もチームの一員となって、皆で同じ方向・目標を目指すというものです。
「患者中心の医療」はもはや古い概念で、今は患者も医療チームの一員だという考え方が主流になりつつあります。
かといって、この症例のように認知症に癌を発症した方の場合、認知能力の低下で、判断・自己決定、しかも疼痛すら適切に意思表示できない方は、周囲のご家族や関わる医療・介護の援助職が痛みの具合までも含めて察してあげることが大切になってきます。この意味では、認知症合併がんの事例では、「患者中心の医療」という概念は生きているような気がします。

 




 
Sent: Friday, January 22, 2016 9:05 AM
Subject: RE: [yawatahama-ml :261] 在宅医療の質を高めるために必要な家族支援の在り方
この事例の担当ケアマネです。
 
今回のケースは、元気な頃からの関わりで、昨年末までは通いを利用されていましたが、認知症があるがために、
痛みを訴えることができず、食欲低下などが見られていく中で、12/29が通い最後の利用となりました。
状態が変化する中で、先生とも何度も話し合い、訪問対応で支援していく方針となり、訪問を繰り返す中、
1/19お亡くなりになりました。
 
今回、少しでもご家族の不安が軽減できるようにとできる限り、ご家族が不安に思われていることが何かを把握し、
そこに対して支援も考えて行きました。しかし、ご家族の不安を完全にはなくすことができず、入院を選択されて
いました。死に対する恐怖を特に長男さん夫婦が感じておられた様子も伺えます。特に長男さんは、年末まで、
ご本人と口喧嘩もされておりましたので、弱りゆく母を見るのが辛かったことも考えられます。しかし、年が明け、
他の兄弟が自宅に帰られたり、会いに来てくれたりする中で、亡くなられる数日前に初めてご本人が眠られている
お部屋の入口まで来られ、中の様子を見られる姿がありました。また、長男のお嫁さんも今までは、「ようせん」
「わからん」と言われていましたが、少しずつ、「お義母さん、しんどいね。」「お義母さん、休もうか。」などと
優しく声をかけられている姿が見られるようになりました。これだけでも、このご家族にとったら精一杯のことだった
のだと思います。
最後は、毎日のように面会者も来られ、『自分の家で最期まで』というご本人の思いに寄り添えたことはよかったと
思います。若い頃から、長男夫婦と一緒じゃなければいけないと思う、ご本人の思いで、元気な頃からご家族は身動きが
なかなか取れなかったことは事実ですが、長男夫婦と一緒に自分の家で最期を過ごすことができたことは、ご本人に
とっても幸せな事だったのではないかと思います。
 
この度は、森岡先生をはじめ、たくさんの方に支えられて旅立たれました。私たち、介護の現場もたくさんのことを
勉強させて頂きました。
本当にありがとうございました。

 
 From: yawatahama@ml.asahimachi-gp-clinic.com
Sent: Thursday, January 21, 2016 8:46 AM
Subject: Re: [yawatahama-ml :261] 在宅医療の質を高めるために必要な家族支援の在り方
ケアマネ兼コーディネーターです。
在宅療養において療養の意思決定が本人に出来ない場合、患者さんの家族が療養の意思決定を行います。
その際、家族が適切な意思決定を行うためにケアマネとして
家族が意思決定が出来ない要因(社会的要因や家族力の問題)などをアセスメントして環境を整備し社会資源に繋げたり
家族の能力を引き出す家族関係の再構築などを行います。
ただ、どうしても出来ることには限界があり在宅療養において家族には常に不安がつきまといます。
患者さん家族は先生方の「何かあったら、何時でも入院できるよ」という一言があると本当に安心して自宅で過すことが出来ます。
森岡先生のおっしゃるとおり早く八幡浜でもバックアップベッドが整備できればと思います。
 

 
| 院長ブログ | 17:54 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

在宅医療の質を高めるために必要な家族支援の在り方

最近経験した認知症に大腸癌を合併した一例


患者さんは、87歳女性。平成25年5月、転倒し左膝蓋骨骨折で手術を受けました。それまでもの忘れがありましたが、この外傷をきっかけに認知機能の低下が目立つようになりました。
平成25年7月24日当院初診。初診時、HDS−R:7/30,頭部CTで側脳室下角の拡大が著明で、アルツハイマー型認知症と診断し外来通院中でした。

平成26年秋ごろから不明熱が続くため、平成26年12月、当院で腹部CT検査を実施したところ、上行結腸に大腸癌と考えられる腫瘍を認めました。認知症が高度の為、ご家族とも何度も相談し積極的な治療はせず自然経過を看ることになりました。
平成27年9月の腹部CTで新たに肝転移が認められました。平成27年12月より全身状態不良となり癌の末期と判断されました。平成28年1月より訪問診療でかかわることになり、予後は約1か月と推定されました。

ご本人は認知症のため実際は疼痛があるにもかかわらず、適切に訴えることができず、寝たきりになっていましたが、オピオイド(フェントステープ1mg、途中2mgに増量)を開始したことで一時的に元気を取り戻し、トイレ歩行などが可能になりました。しかし、夜間の家族(主たる介護者が息子嫁)の看護がかえって大変となり、息子嫁への負荷が重くなり在宅ではもう看ることができないと相談がありました。

ご家族の負担も考慮し、市内U病院のO先生に入院をお願いしたところ、すぐには無理だが1週間後にはベッドを開け用意するとのことでした。このことで1週間後には病院へ入れるとの保証ができ、ご家族も入院まで何とか頑張ってみる決意をされました。

それから、5日後状態は急変。入院予約日を待たずに、1月19日早朝に自宅でお亡くなりになりました。結局、在宅での看取りになりました。結果論ではありますが、ご家族も在宅・自宅でお母様の終末を迎えることができてよかったように思えました。

この症例から、在宅療養を継続するとき、患者さん本位のマネージメントを考慮することが最優先ですが、看護・介護するご家族を支援することも重要です。介護保険制度を有効に利用し訪問看護は医療で計画しましたが、それでもご家族それぞれにご事情があります。本例では、いったんギブアップされかけていたご家族が、数日後には受け入れていただける医療機関があるとの保証ができたため、結局最後まで自宅で看ることが可能でした。

在宅医療を継続するとき、何か緊急事態が生じたときバックアップしていただける医療機関が存在していれば、ご本人・ご家族・在宅医が自信を持って在宅医療の質を上げることが可能と考えています。現在、八幡浜市では在宅がん緩和ケアのバックアップ病院がありません。近い将来には市立八幡浜総合病院がバックアップ病院(がん支援病院)になっていただけるとお聞きしています。そうなれば、在宅医療・在宅がん緩和ケアもますます充実したものに発展していくものと期待されます。

 

  
               撮影日
:H26.12.20 上行結腸癌
  撮
            影日
:H27.09.29 増大した上行結腸癌
  
             撮影日
:H27.09.29 癌の肝転移
 
| 院長ブログ | 22:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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